売国奴の見分け方
強い語感
「売国奴」、現代の日本でここまで語感が強いのに濫用されている言葉はない。たいていはある政策に反対する勢力によって、その政策を推し進める勢力を誹謗中傷するのに使われ、古くは日本人という近代意識が目覚める大政年間から使われていたらしい。
誤用が多い
残念ながら、「売国奴」には誤用が多い。そもそも、売国の対義語となる愛国という行為そのものの定義が不明確であり、当人たちの国家や愛するという行為そのものに左右されてしまう。
また、もし明確な定義を置いたとしても、その定義そのものが権力闘争の具として利用され、本来の意義からずれてくることが用意に想像される。
しかし、売国奴は実在する
しかし、本人たちの自覚、無自覚に関わらず、売国奴になっている人は多い。愛国を国家の利益となる行為を行うこととするならば、売国は国家の利益となる行為の不作為もしくは国家の不利益となる行為の作為となる。例えば、昨今、ゴーンの高飛びが世間を賑わわせているが、ここでもかような売国を行っているものがいる。
売国奴その① 橋下徹
橋下氏は文楽の廃止などの文化破壊、大阪市の公務員の低能化などなど数々の問題のある政策を行う一方、大阪の商業振興、おおさか東線の開通など効果のある政策を行った毀誉褒貶のある政治家である。そんなものの評価は後世の研究家に任せておけばいい。
しかし、今回のツイートはまさに売国である。
確かに言うことは分かる。しかし、ゴーンの逃亡はまったく関係ないだろう。
なお、ゴーン氏についても、コストカット、大量解雇などの経営手法の評価は功罪がたる。しかし、その判断は専門家に任せればよいのである。
だが、日産の利益の一部を不当に私益に回したのは明確な犯罪(特別背任罪もしくは横領罪)もしくは不道徳である。その人間が法的に許された保釈を受けた段階で、裁判を受けることなく「高飛び」したことが問題の本質なのである。
また、戸籍システムは日本人だけに限定されるものではあるが、人一人の一生を追いかけることができる優秀な国民管理システムである。しかし、現在の社会変化に対応できていない面もある。だから、アメリカ式の永住権システムを導入しようという考えは案の一つとしてはありえる。
しかし、この提案を関係のない話から繋げることはまさに「国家の不利益となる行為の作為」である。
売国奴その② 堀江貴文
私自身、私人としての堀江氏の夢を追いかける姿勢はとても好きである。彼の言うことは往々にして正論であり、たまに唸らせるくらいの論理展開をすることもある。しかし、今回の動画はいかがなものか?
まあ、このような問題点は従前から指摘されたものであり、1980年から徐々に改善されつつある。この問題もこのゴーン氏の高飛びに乗るようなやり口である。何かもっと別の相応しい事件があったはずである。この下衆な根性こそがまさに売国的である。
売国奴その③ 法務省
法務省がやったことは上記の二人とは真逆の「国家の利益となる行為の不作為」である。
Carlos Ghosn escape to Lebanon 'illegal' and 'unjust' say Japanese officials - CNN
法務省は今さら出国審査を強化することを表明した。日本のようなスパイ防止法などの国家安全保障法制のない国では、出入国の厳密な管理こそが社会秩序の安定に寄与する。例えば、米英は出国審査が緩いことが有名だが、それは愛国者法などの監視システムや厳密な入国審査があることが関係している。
日本の入国審査は入国に3時間も掛からず、しかも外国人一人一人を追跡する監視システムも存在しない。それならば、出国審査という最後の関門こそ強化すべきである。この国はなんと70年間に渡り、それをおざなりにしてきたのである。
逆に在日外国人の管理には必死で、生まれも育ちも日本である外国人を出身国に強制送還させるなどの行為をしている。本来、管理を強化すべきは世界中を飛び回る人々であり、郷土とともに生き死ぬ日本生まれの人々は国家が率先して保護すべき人材である。
このような「不作為」こそが今回のおざなりな逃亡劇を産んだのである。
売国とは本質を見誤ること
最後は語気を強くしたものの、売国を国家の利益となる行為の不作為もしくは国家の不利益となる行為の作為と定義するならば、より厳密な売国とは国家問題の本質を見誤ることになるだろう。そこから、副次的な売国として国家問題の本質を意図的に見誤らせて、自己利益の拡充を図ること(ゴーンがレバノンで画策していることはまさにそれである)も含まれる。
役人や政治家という生業は本質的に売国に陥りやすく、だからこそより勤勉な態度を保持しないと容易に誰かに騙されやすくなる。自己も含めて、このことを強く意識しないといけない。今の政治家、役人たちはそのことを意識して生きているのだろうか?